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【お探し物は図書館まで】青山美智子|希望を与える司書

お探し物は図書館まで

青山美智子先生。本作品を読むまで正直お名前を知りませんでした。

あの「木曜日にはココアを」を描かれた方だったんですね。SNSでもよく上がっている作品でもあります。

本作品は「本屋大賞2位」の作品ということだったので購入しました。

話は短編集になって,とても読みやすいです。

ポイントになるのは,必ず「図書室の司書の小町さん」が登場するところ。司書そして各章の主人公にとって「重要な本」や得意の「羊毛フェルト」を渡します。

本作品の表紙をみればどんなものかはわかるかと思います。

とにかく,いろいろなことを考えさせられました。自分の今やっていること,悩み,不安,そして将来は何をやりたいか。

後悔しない人生を送るために,是非とも読んでほしい一冊です。

こんな方にオススメ

● 司書の小町さんが,5人の主人公に何を渡すかを知りたい

● 自分の人生,将来を考えてみたい

● 自分は誰の影響を受けているのか,誰に影響を与えているのかを考えたい

作品概要

2021年本屋大賞第2位!!
「お探し物は、本ですか? 仕事ですか? 人生ですか?」
仕事や人生に行き詰まりを感じている5人が訪れた、町の小さな図書室。彼らの背中を、不愛想だけど聞き上手な司書さんが、思いもよらない本のセレクトと可愛い付録で、後押しします。
自分が本当に「探している物」に気がつき、明日への活力が満ちていくハートウォーミング小説。
-Booksデータベースより-



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主な登場人物

小町さん・・図書室の司書。

朋香・・・一章の主人公

・・・・二章の主人公

夏美・・・三章の主人公

浩弥・・・四章の主人公

正雄・・・五章の主人公

本作品 3つのポイント

1⃣ 司書の小町さんと5人の主人公

2⃣ 各章の結末とは

3⃣ 自分の生きる意味を考えさせられる

司書の小町さんと5人の主人公

一章 朋香 二十一歳 婦人服販売員

朋香は「エデン」というスーパーの中レジ打ちや接客の仕事をしています。

しかし,普段の仕事には鬱屈しているようです。苦手なパートの沼内さんって人もいるし,何よりも今の仕事がそこまで好きではない。

眼鏡売り場には桐山という男性がいます。彼はかつて出版社で働いていたようです。

そのことを知り,朋香自身も実は転職を考えていると伝えます。

パソコンを使った仕事に就きたいと考えている朋香は,小学校でやっているパソコン教室へ通うことに決めます。

そしてパソコンスキルを身につけるための本を探しに図書館へ行くのです。

そこで司書の小町さんから渡されたものは。。。

朋香

二章 諒 三十五歳 家具メーカー経理部

諒はかつてアンティークショップへ行った時の感動が忘れられず、いつか自分のお店を持つことを夢見ていました。

普通のサラリーマンである諒は,仕事を押し付けられたりしながら鬱屈した毎日を送っていました。

ある日、図書館へ行くことにします。「何かお探し?」「起業の本とかありますか?」

ここで司書の小町さんに,いつかアンティークショップを開きたいという夢があることを伝えます。

そこで小町さんが薦めたものは。。。

諒

三章 夏美 四十歳 元雑誌編集者

崎谷夏美は出版社「万有社」で働いています。

『Mila』という雑誌編集部で、15年間頑張ってきました。

夏美はある日妊娠しますが,子供が産まれる直前まで働きます。

双葉が生まれてすぐに職場復帰するのですが,ここで夏美は別の部署への異動を命じられます。

これまで雑誌の売上に貢献してきたという自負があった夏美はショックを受けます。

ある日、双葉を連れてコミュニティハウスに遊びに行くと、図書室のスタッフから呼び止められます。

司書の小町さんが渡したものは。。。

編集者

四章 浩弥 三十歳 ニート

昔から漫画が大好きだった浩弥という男性。

夢を叶えるべく,イラストの専門学校に入学しました。

しかし就職で失敗医し,さらにアルバイトも続かず、現在はニートでした。

浩弥は偶然行ったコミュニティーハウスの図書室へ訪れます。

そこには司書の小町さんがいて,漫画家の夢があったが無理だったということを伝えます。

そんな浩弥に,司書の小町さんが渡したものは。。。

漫画

五章 正雄 六十五歳 定年退職

正雄は65歳になり,仕事を定年退職しました。しかし「明日から何をすればいいのか」わからない。

趣味もない,一介の会社員だった彼にとっては大きな問題でした。

ある日,妻の依子から囲碁教室に行ってみたら?と勧められます。

囲碁教室に通うようになり,立ち寄った近くの図書室で、司書の小町さんと出会います。

小町さんが持っていた菓子箱を見て、正雄は自分が「この菓子メーカーに勤めていた」と話します。

そして,定年退職後に「残りの人生が、意味のないものに思える」伝えるのです。

そんな正雄に,小町さんはあるものを渡します。

定年退職

各章の主人公の変化

※ネタバレを含みますので,見たい方だけクリックしてください!
クリックすると「各章のネタバレ」が表示されます。

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一章 朋香

朋香はパソコン教室へ行き,その足で図書室へ行きます。

そこには司書の小町さんに「パソコンに関する本がないか」を聞きます。

それと同時に現在の状況や転職のことを考えていること、今の仕事にやりがいも感じないことを伝えます。

そこで小町さんから渡されたのはパソコン関連の本と,あの『ぐりとぐら』を渡されました。

そして「付録」ということで「フライパン」の形をした羊毛フェルトも渡されます。

『ぐりとぐら』って,ウチの子が小さい時によく読んであげた記憶があります。

童話なのでとても分かりやすい話で,ぐりとぐらが二人で一生懸命カステラ作る話ですよね。。

この『ぐりとぐら』がきっかけで,朋香は料理を始めます。もちろんカステラを作ったことはない。

カステラを作りながら朋香は気づくのです。ぐりとぐらが森に入った理由は、卵を見つけるためではなかった。

いつものようにどんぐりや栗を拾いに行った時に、たまたま卵を見つけたのだと。そしてすでにカステラの作り方は知っていたのだと。

朋香のカステラ作りは失敗ばかりでしたが,続けていくうちに徐々に作れるようになっていきます。

その時パートの沼内さんが言っていた言葉を思い出します。

「続けているうちに分かることがある」「仕事は協力しあってやっていけばいい」という言葉が腑に落ちるのでした。

何ができるのか、何をやりたいのか、自分ではまだわからない。

だけどあせらなくていい、背伸びしなくてもいい。

今は生活を整えながら、やれることをやりながら、手に届くものから身につけていく

朋香はぐりとぐらの姿を思い浮かべながら、静かに決意するのでした。

絵本作家

二章 諒

諒は司書の小町さんから『植物のふしぎ』という本を薦められます。そしていつものように手作りのフェルト,猫の「キジドラ」の付録

今度は一体,どんな意味があるんでしょうか。

諒はやる気のなさそうな吉高さんという社員に注意したところ,言いがかりをつけられパワハラ扱いされてしまいます。

しかも吉高さんは社長の姪だと分かり,何もかもが嫌になってそうな感じです。

ところで,諒の恋人の比奈という女性は事務のバイトをしていました。

シーグラスのアクセサリーを作るのを趣味にしています。

ある日「コミハ通信」に書かれていた「キャッツ・ナウ・ブックス」の紹介が載っていました。

会社員勤めの傍ら本屋を開いたという安原さんの紹介でした。そこで『植物のふしぎ』を渡された意味に気づくのです。

人間は地上で生きているから大抵の場合,花や実にしか目がいかない。

でも,サツマイモやニンジンに注目する時は,とたんに地下にある「根」が主役になる。

植物にしてみれば,双方が互いに等しくバランスをとっている

つまり,パラレルキャリアという生き方。

諒は安原さんの元へ訪れ、起業したことについていろいろと聞き出します。

時間もない,お金もない,という諒に対し,安原さんは、次のようなアドバイスをします。

その『ない』を『目標』にしないと

大事なのは、運命のタイミングを逃さないってことじゃないかな

そして諒は自分がアンティークショップを開きたい夢を持っていることを比奈に伝えます。

比奈は,ネットショップ運営の経験を諒に伝えます。「信用を回すのが大事」だと。

会社に行くと吉高さんからパワハラ扱いされた一件は誤解だということになりました。

諒はやはり「信用」が大事だったと感じつつ,そして次のように思うのでした。

やることはたくさんあるけど「時間がない」なんて言い訳はもうよそう。「ある時間」で、できることを考えていくんだ

アンティークショップ

三章 夏美

司書の小町さんは『月のとびら』という占いの本と「地球の模様」が描かれた羊毛フェルト渡します。

今度はどんな意味があるのでしょう。

夏美のいなくなった雑誌編集部の編集長は木澤さんに代わっていました。

夏美はかつて担当していた「彼方みづえ」の連載も奪われてしまいます。

そんな時,木澤さんから「みづえ先生のトークイベント」に誘われました。

しかし,娘の双葉が熱を出してしまい,保育園から連絡が入ります。

迷った挙句,仕方なく双葉の迎えに行き,イベントに参加することができませんでした。

しかし後日,みづえ先生の方から夏美に声をかけてもらい、会うことになりました。

そこでみづえ先生は雑誌『Mila』での連載で夏美が一生懸命支えてくれたことへの感謝の気持ちを伝えるのです。

夏美はここでみづえ先生に打ち明けます。子育てと仕事がうまくいってないと。

嫉妬する感情は堂々巡りしていくのだということを「メリーゴーランド」に例えてアドバイスされます。

夏美は図書館で借りた「占いの本」を手に取って読みます。「変容」について書かれていました。

夏美はここで,自分が本当にやりたいことは「小説の編集」であると確信するのです。

そして夏美は運よく,絵本を主に扱う出版社へ来ないかと勧められるのです。

そこは子育てしながらも,女性にとって働きやすい環境でした。

夏美は新しい場所で,夢に向かって踏み出したのでした。

編集者

四章 浩弥

小町さんが渡したもの。それは『ビジュアル 進化の記録 ダーウィンたちの見た世界

そして「飛行機」のフェルトを渡したのです。今度はどんな意味があるのか。

ある日,浩弥は高校時代のタイムカプセルを開ける会に参加します。

「歴史に名を残すようなイラストレーター」と紙に書いたのを覚えていたため,浩弥は中を見ずに回収してしまいました。

浩弥はその時,征太郎という友人と再会します。

征太郎の夢は小説の夢を描くことでした。水道局で働きながら現在も小説を書き続けています。

浩弥は『進化の記録』を読んでみます。そこには衝撃的なことが書かれていました。

『種の起源』を書いたダーウィンの陰には,ウォレスという自然学者がいたようなんです。

「ウォレスの方が先に発表したはずなのに、先に公表したダーウィンの方が歴史に名を残した」ということに驚きます。

図書室で小町さんにウォレスのことを話します。すると小町さんは

「浩弥くんがウォレスの存在を知り、ウォレスについて考えているだけでも、ウォレスの生きる場所を作った」

と話すのです。

ある日,征太郎から電話がかかってきます。何と彼の作家デビューが決まったようなんです。

征太郎は浩弥に伝えます。

高校生の時に浩弥だけが作家デビューを信じれくれたことが、書き続けられた原動力だった」と。

浩弥はタイムカプセルに書いた内容を確認します。

人の心に残るイラストを描く

浩弥が当時考えていたことと,記憶は違うことに気づいたのです。

浩弥は小町さんから頼まれ,図書室でのイベントのポスターなどを作る仕事をするようになりました。

コミハ通信でのイラストが小さい子から好評を得ていることを知り,嬉しくなるのでした。

浩弥は、自分が今生きていることを強く実感した瞬間でもありました。

イラストレーター

第五章 正雄

彼女は囲碁の本に加えて『げんげと蛙』という詩集を渡します。

さらにカニの形をした羊毛フェルトを「付録」として渡すのです。

「詩人と一緒に生きる」「詩を書きたくなったら、ぜひ書いてください」

正雄は半信半疑ながらも書き写すことを始めてみます。

『カジカ』という詩が気になるが、何を意味しているか分からずに書きやめてしまいました。

ある日,本屋で娘の千恵が働いているのを目にします。

そこで千恵から詩についてアドバイスを受けます。

「詩は好きなイメージをして読めばいい」

正雄は改めて『カジカ』を読んでみると、その面白さに気づきます。

正雄はマンションの管理人の海老川さんと会話していた時のことです。

海老川さんは実は以前,多くの仕事をしていたことを知ります。

権野さんにとって,会社が社会ですか。

人と人が関わるならそれは全て社会だと思うんです。

接点を持つことによって起こる何かが、過去でも未来でも

「ひとつの会社でずっと勤めたお父さんだってすごいよ」

正雄は千恵が本屋で働いている意味を聞いたり,さらに父への想いを知ることで心を揺さぶられます。

正雄は図書室へ訪れ、司書の小町さんに本の付録はどのようにして選んでいるか聞こうとします。

すると小町さんは「インスピレーション」と答えるのです。

皆さん、私が差し上げた付録の意味をご自身で探し当てるんです。本も、そうなの。

読んだ人が自分自身に紐づけてその人だけの何かを得るんです

そして妻の依子も「自分がリストラに遭った時,正雄の言葉に助けられた」と打ち明けます。

ただの一介の会社員というわけではなかった。自分も誰かに影響を与えていたことに気づいたのです。

そして前向きに生きることを決心した正雄は、最後に自分だけの詩を作るのでした。

影響を与える

自分の生きる意味を考えさせられる

司書の小町さんから渡されるもの。何か意味のある本と,羊毛フェルトの作品。

それが各章の主人公にとって,悩み解決のための大きなヒントとなります。

小町さんはさりげなく渡しているように思いますが,どうやって本と付録を選んでいるのだろうか。司書とても不思議な感じを抱きながら読みました。でも全て,意味があったんですね。

僕自身にも「できない」という思い込みだったり,こうあるべきであるといったような先入観があったりします。

誰かに相談するとそれが一気に解決したり,何でこんなことで悩んでいたんだろうって思うこともあります。

そしてその悩みもいろいろで,目の前の心配ごとだったり,将来への不安だったりするわけです。

本作品でも描かれていますけど,誰かが夢を達成するというシーンがあります。正直羨ましいと思いますよね。

でもそれは自分のかけた一言が影響しているかもしれない。決して一人の力で実現できているわけではないということなんですね。

そういう物語を読むと,自分もそうなりたいと強く願うようになります。自分もできるのではないか。将来を考える正直,僕自身は将来何をやりたいのかを具体的に考えたことはないです。

組織という中ではなく,何か特別なものでメシを食えるようになること。

これまで社会という中で生きてきて,数えきれないほどの悩みや不安に直面しました。

そこには助けてくれる人もいたし,それがない時には自分自身が覚悟を持って行動した経験もあります。

組織の中で働かなくても,自分の力で仕事をしていきたい。

それは一気にできるわけでもなく,少しずつ力を蓄えながら「いつか」できるようになるかもしれない。

今は気になる小説を読み続けて,自分なりの感想をこのブログに書いています。ブロガー書き始めて一年以上経ちましたけど,一年前とはブログの書き方も変わったし,検索結果にも変化が現れました。

やっぱり続けるって大事なんですよね。キツい時もあったけど,続けてよかったなと。

他の人の書評を見ると,その書評に惹かれることもあります。自分の考えは間違っているのだろうかって考えることがあります。

それでも自分自身が小説を読んで感じたことをそのままに書き続けていきたい。

本からは本当に多くのことを教えられます。もちろん捉え方はひとそれぞれ。

小説を読みながら,多くの知識も学べるし,多くの人の気持ちを理解することもできる。

どんなことにも一長一短があると思うし,立場が変われば異なる見方があるのだと感心することがある。分析最後に本作品で気に入った言葉を書きます。

作る人がいるだけじゃダメなのよ。伝えて渡す人がいなきゃ。

一冊の本が出来上がるところから,読者の元へその本が届くまで,どれだけの多くの人が関わっていると思う?

私もその流れの一部なんだって,誇りを持っている

いつか,何かの流れに乗って,自分の夢を実現したいと思います。

この作品で考えさせられたこと

● 司書の小町さんが渡すものには,実は大きな意味が込められていた

● 自分の将来を考えさせられる作品だった

● 自分がやりたいと思うことを,これからも続けていきたい

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