道尾秀介先生の超話題の作品。
「最後の1ページに驚愕する」と表紙の帯に書いてあったこの一言で,つい買ってしまった本作品。
以前,湊かなえ先生の「最後の一行で衝撃の事実がわかる」という「リバース」という作品をイメージして,その面白さを再度味わおうと思って買ったんですね。
ところがそれは少し違いました。
各短編の最後1ページに登場する写真。それを見ると事件の真相がわかってしまうという,面白い趣向の作品です。
この最後の一枚の写真(あるいは地図)だけで最後の最後に「大どんでん返し」を演出してくれるのです。
こんな作品には初めて出会いました。今までにない趣向ですよね。ある意味,道尾先生の挑戦の作品なのでしょうか。
ただ,正直その一枚を見ても「これ,一体どういうこと?」って思う方も多いのではないでしょうか。
インターネットで調べてみてもそういう方は多いようですし,またその写真の真の意味をネットで調べてようやくわかったって人も多いようです。
実は僕もそのうちの一人です(笑)
それぞれの短編について,概要とあらすじを書いていこうと思います。
目 次
1. こんな方にオススメ
2. 登場人物
3. 本作品 3つのポイント
3.1 4つの短編の概要
3.2 各章の結末とは
3.3 各章の考察と作者の構成力
4. この作品で学べたこと
● 話題になった「いけない」をとにかく読んでみたい
● 4つの章の内容と繋がりを知りたい
● 最後の1ページで何を思うかを体験してみたい
ラスト1ページですべてがひっくり返る。 話題の超絶ミステリがついに文庫化!
各章の最後のページに挟まれた「写真」には、物語がががらりと変貌するトリックが仕掛けられていて……。2度読み確実! あまりの面白さが大反響をもたらした、道尾秀介渾身の超絶ミステリ。
-Booksデータベースより-
安見邦夫・・・事故の被害者。加害者グループに失明させられる
宮下志穂・・・宗教団体。安見一家に近づく
隈島刑事・・・事件を追う刑事
竹梨刑事・・・隈島の部下というか,元部下?
水元刑事・・・竹梨の部下。事件の真相に気づいてしまい。。。
1⃣ 4つの短編の概要
2⃣ 各章の結末とは
3⃣ 各章の考察と作者の構成力
① 弓投げの崖を見てはいけない
白蝦蟇シーラインという道を通る時,その崖をみてはいけないということです。
かつてどこかの殿様が弓を折って崖から捨てたという伝説からここは「弓投げの崖」と言われ,自殺の名所になっていました。
ここで起こる事件が発端で,思ってもない展開が待っていました。
最後の一枚の図でその真相がわかるというものです。本当に驚きます。
② その話を聞かせてはいけない
中国生まれの「珂(か)」は,日本で父親が中華料理店を営む家に住んでいました。
ところが周りの友人たちが「バカ(馬珂)」って呼ばれ,いじめられていました。
ある日,珂は文具店でおばあさんが胸を刺されるシーンを目撃。しかし,後日おばあさんの元気な姿を見ます。
同級生の山内にその話をするも,信じてもらえません。
一体,珂は何を見たのでしょうか。
③ 絵の謎に気づいてはいけない
蝦蟇倉市にある宗教団体「十王還命会」の宮下志穂が殺害されてしまいます。
刑事の竹梨と新人刑事の水元が捜査を始めます。当初は自殺とされました。
密室だったからです。でも何か違う匂いがします。
疑問を持つ水元は独自に捜査を始めます。真相は何なのか?
④ 街の平和を信じてはいけない
目が見えない安見邦夫は,7年前に自分が犯した事件の告白文を,妻の弓子に代筆させていました。
それを持って,安見は刑事の竹梨と公園で待ち合わせをします。
この章ではこれまでの章のネタバレ的な話,竹梨という男の末路が描かれています。
ポイントは「告白文」です。重要なのは邦夫のものではなく。。。
ここからは各短編の真相を書きたいと思います。読みながら結構理解の難しい部分もあったので誤記もあるかもしれませんが。。。
※ネタバレを含みますので,見たい方だけクリックしてください!
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① 弓投げの崖を見てはいけない
弓投げの崖の近くで交通事故が発生します。事故に遭ったのは安見邦夫です。
加害者は3人の若者でした。森野兄弟とナオという人物。刑事の隈島が捜査をします。
実は,邦夫の妻弓子は,隈島とかつて関係がありました。
事故があったということで,安見家には宗教団体「十王還命会」が入り込んできます。隈島は弓子に関わらない方がいいことを伝えます。
ある日,3人の若者の一人であるナオが崖の近くで遺体で発見されます。
おそらく,大きめの石で頭部への打撃による犯行。隈島刑事は安見邦夫の復讐ではないかと睨みます。
徐々に加害者への復讐が始まっているような気配。
しかし,邦夫は事故で両目をやられ,失明させられていたからです。本当に邦夫の仕業なのか。
さらに森野兄弟の弟である雅弘は安見家で殺害され,羽毛布団に隠していました。
兄の雅也は復讐のため,安見家へ。ナイフで弓子を殺害しようとします。しかしそこには隈島が。。。
問題はここからです。
雅也は逃げ出します。そして邦夫も雅也を追いかけ,さらに隈島も後を追います。
ここに宗教団体の宮下が運転する車がブレーキ音とともにドンという音がして誰かを撥ねてしまいます。
おそらくこの飛び出した三人のうちの誰かでしょう。一体誰なのか。これを考察するための「地図」が最後のページに載っています。
どうやら最後に「誰が車に撥ねられたのか」というのがポイントのようです。
② その話を聞かせてはいけない
中国からの移住者である「珂」は虐められてましたが,唯一仲間がいました。
山内という少年です。山内がホームレスに襲われているところを珂が助けたんですね。
冒頭で書いた「おばあさんが殺害されるシーン」の話を山内にしますが,一笑されてしまいます。
ところがあの「崖」の近くで男性の遺体が発見されます。
テレビのインタビューに答える二人は,明らかに「あの日」文房具店で見たおばあさんと男の二人でした。
この二人は「嘘を言っている」と感じた珂。
自宅にやってきた警察だと思ってドアを開けた時に,袋をかぶらされ,どこかに連れていかれます。
波の音からそこは「あの崖」だと気づきます。
「自分は殺されるんだ」と思っていましたが,「あいつ」が二人を逆に突き落とします。
この「あいつ」とは誰なのか。最後の写真で判明します。
③ 絵の謎に気づいてはいけない
宗教団体の宮下志穂の遺体を発見したのは,同じ団体の支部長である守谷という人物と,マンションの管理人である中川でした。
宮下はドアノブに吊るされたコードが首に巻かれていたため当初は自殺と思われましたが,先に書いたように刑事の水元は疑います。
「守谷が怪しいのではないか」そう思った水元は,先輩の竹梨とともに捜査を続けます。
どうやら隈島は事件の捜査から外されているようです。実はここがポイントでもあるのですが。。。
さらに事件が発生します。弓投げの崖からマンションの管理人の中川の遺体が発見されるのです。
その中川の遺体には手帳がありました。そこには意味深な絵が描かれています。
それこそ,宮下がドアノブで首を吊っている絵です。
でもこの手帳を持っている管理人がなぜ殺害されなければならなかったのか。この絵の意味を水元は必死で考えます。
実はこの絵,何者かに書き加えられていました。
密室のトリックは「スマートロック」です。本書の中にも
「スマートロックを,錠のつまみに両面テープかマグネットでかぶせて付けて,スマホなどで操作してロックしたのではないか」
水元は確信しますが,そこに迫ってきたのが先輩の竹梨でした。
秘密を知った水元を葬り去るのです。
④ 街の平和を信じてはいけない
以前登場した「安見邦夫」が登場します。刑事の竹梨を呼び出していました。
もちろん竹梨は7年前の事件①で隈島とともに捜査していた人物です。
邦夫はやはりナオ,つまり尚人を殺害していました。
その告白文をしたためた手紙を渡すというのです。告白文は妻の弓子が代筆していました。邦夫は告白文を竹梨に渡します。
また,竹梨にも秘密がありました。竹梨の犯罪の告白文です。
③の話で自分の罪を認めていた竹梨は,告白文を提出できないでいました。今もカバンには告白文が入っています。
ところが竹梨が少年の自転車のチェーンを直している間に,邦夫は竹梨のカバンから竹梨の書いた告白文を抜き取りました。そして破いてしまいます。
そして最後,竹梨は邦夫の告白文を読もうとするのです。そこに書かれていたのは。。。
最後の一枚の写真。何とも言えない結末でした。
本作品は,これまでの作品を超越している感もあります。
最後の一文ではなく,4つの短編それぞれの最後の1ページに図や写真があり,その一枚を見て読者が推理したり,あるいはその結末に溜息が出てしまう。
これを考えた道尾先生の構成力に感服しました。
第一章の「最後に車に轢かれたのは誰なのか」という疑問は,地図と最後の数ページを良く読むとおのずと推理できました。後の章でもそれを匂わすことが描いてありましたが。
第二章の「誰が珂を助けたのか」というのは,最後の一枚を見て,その人物の着ているものをよく見れば作中にヒントがあります。
第三章の「竹梨は,被害者の手帳の絵をどのように書き換えたのか」という疑問は,最後の1ページを見れば一目瞭然です。
そして最後の第四章。
第一章の邦夫の告白,第三章の竹梨の告白。この2つが取引の交換条件になると思いきや,最後の写真を見て読者も「唖然」としたのではないでしょうか。
とにかく,確認のためにネットを検索してしまうくらい面白かったです。
早く「いけないⅡ」を読んでみたいですね。
● 最後の1ページを見てもわからない結末があって,ネットで検索
● ネット上で多くの人が独自に推理しているところが面白い
● 新しい感覚の作品,作者の構成力に感服した