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【点と線】松本清張|4分間の重要な意味とは

点と線

松本清張先生の作品の言えば,本作品を思い浮かべる方,多いのではないでしょうか。

僕自身もまず「松本清張の作品,何から読もう」と考えて購入したのがこの「点と線」です。

松本清張ブーム」を巻き起こした作品で,発刊が1958年です。もちろん僕自身は生まれてません。

この時代にも,こんな面白い作品を描かれていた方がいたなんて,驚きです。

知る人ぞ知る,有名なトリックが描かれている作品ですが,それには深い意味があり,読んでいて唸ってしまいました。さすが大御所。

何度か映像化もされているようです。

2007年のドラマでは,鳥飼刑事をビートたけしさん,三原刑事を高橋克典さん,それ以外にも樹木希林さんや市原悦子さんなど,相当な豪華キャストです。

時代錯誤的な部分もかなりありますが,それはそれで逆に味が出ているように思います。

まずは読んでみてほしいと思います。

こんな方にオススメ

● 「松本清張ファン」が増えた有名な作品を読んでみたい

● 1950年代の日本を舞台にした事件を知りたい

● 事件の驚愕のトリックを知りたい

作品概要

九州の海岸で発見された男女の死体。汚職事件渦中の役人と愛人の心中……そう誰もが思ったが、疑念を抱いたベテラン刑事が独自に捜査をはじめる。しかしたどり着いた容疑者には疑う余地のないアリバイがいくつもあった。同時刻に北海道にいたという鉄壁のアリバイ――東京駅で1日に1度しかない、たった4分間の空白――時刻表トリックを用いた元祖とも言われる作品で、空前の推理小説ブームをまきおこした傑作。松本清張の代表作であり、ミステリ名作中の名作!
-Booksデータベースより-



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主な登場人物

鳥飼重太郎・・福岡署の刑事。

三原紀一・・・警視庁捜査二課の警部補

安田辰郎・・・機械工具店である安田商会の社長

安田亮子・・・辰郎の妻。病弱である

お時・・・割烹料亭「小雪」の女中

佐山憲一・・・産業建設省の課長補佐

石田芳男・・・産業建設省の部長

本作品 3つのポイント

1⃣ 香椎海岸での事件

2⃣ 鳥飼から三原へのメッセージ

3⃣ 事件の驚愕の真相

香椎海岸での事件

話は,佐山という男性とお時という女性が福岡県内の香椎海岸で亡くなっているのが発見されるところから始まります。

香椎海岸佐山は産業建設省って今の国土交通省のようです。省庁の名前も時代とともにかなり変化してますもんね。

もう一人のお時という女性は,東京の割烹料亭の女中で桑山秀子といいました。

当初はこの2人の亡くなった状況から無理心中かと思われました。

無理心中ところがこの状況に疑問を抱く刑事がいました。鳥飼という刑事です。

確かに佐山自身は産業建設省の汚職に関わっているということで,警察からもマークされている人間だったようです。

政治がらみの汚職ということで,警視庁の捜査二課の三原も動き出していました。

鳥飼が疑問に思った理由。それは佐山の遺留品から,特急『あさかぜ』の食堂車での領収書が出てきたんですけど,これが一人分だったんですね。

心中するくらいの中であれば二人分の領収書があっても良さそうですが,確かに鳥飼刑事が疑問に持つのもわかりますよね。

その鳥飼と警視庁の三原は合流します。鳥飼と三原彼らは遺体の確認,そして鑑取り(人間関係を洗い出す)を行います。

ここで更なる疑問が。。。

佐山の兄に聞いてもお時のことは要を得ない様子。逆にお時の母親であるハツに聞いても佐山とは繋がらない。

ということは心中ではない? つまり「偽装」?

そんな中,重要な証言が登場します。

お時の女中同僚である「とみ子」が,東京駅で目撃したというのです。

東京駅とみ子は割烹料亭の常連客である安田辰郎と一緒に食事を摂った後,13番ホームで見送ったらしい。

その時「15番ホームから佐山とお時が『あさかぜ』に乗り込むのを見た」ということのようです。

あさかぜん~,やはり心中か? 一体何が起こっているんだろう。

ところがここで「点と線」の有名なトリックが登場します。

鳥飼刑事は,東京駅の13番と14番ホームは常に電車が通っており,佐山を目撃したのは一日でもわずかに4分間に過ぎないということを知ります。

これで鳥飼の疑いはさらに増幅するわけです。

この『あさかぜ』の乗車の件は果たして事実なんでしょうか。

鳥飼から三原へのメッセージ

鳥飼たちは今度は安田をマークします。そして重要な事実を発見します。

どうやらこの安田,産業建設大臣の原や,部長である石田とかなり親しい仲であったらしいのです。

かと言って,その繋がりと『あさかぜ』はどう結びつくのか。

あさかぜ読んでいくと,どうもこの安田はあやしい。本作品の面白いところは倒叙的であるというところです。

つまり、犯人は早い段階で判明していて、その動機やトリックを導き出していくというもの。

鳥飼はこの安田のアリバイを調べますが,残念ながら安田にはアリバイがありました。

安田は事件当時、北海道に行ってました。

上野を急行『十和田』に乗って出発,その後,青函連絡船で函館渡ります。

函館連絡船そして『まりも』に乗って札幌いたのです。

う~ん,やっぱり安田は犯人じゃない? でも読みながら鳥飼がこのトリックを暴いてくれそうな気がします。

北海道と福岡。あまりにも遠すぎる。時代は1958年。東京オリンピックが1964年だから,当然新幹線すら存在しないのです。

犯人は安田に間違いない。でも何かトリックがあるはず。鳥飼頑張れ。

と思っていたんですが,ここで鳥飼から三原へ手紙が送られてきます。

それは鳥飼から三原への事件に対する考察とアドバイスでした。

鳥飼からの手紙この男の犯行に間違いないと思ったら,二押しも三押しもするべき

鳥飼には苦い過去,後悔する過去があったようです。もう一息頑張れば真犯人を逮捕したくてできなかった過去が。

同じ轍を踏まないように,鳥飼は三原へメッセージを送ったのです。

この手紙を受け取った三原は,ここから必死に「安田犯行説」を証明するためにさらに動き出すのです。三原が動くそしてとうとう驚愕のトリックが明らかになります。

一体,そのトリックとは。。。

事件の驚愕の真相

※ネタバレを含みますので,見たい方だけクリックしてください!

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やはり,犯人は安田でした。

『まりも』には産業建設省の人間が乗船していました。しかしそれは安田ではありませんでした。

石田と事務次官が乗船していたのです。事務次官は安田の代わりに安田の名前でで乗船していました。

つまり,安田が乗船したように偽装工作していたのです。

隠蔽工作その一方で,飛行機の搭乗名簿に安田の名前はありませんでしたが,実際には東京から福岡、福岡から東京、東京から札幌と3便それぞれに産業建設省と関係のある人間の名前がありました。

しかしそれらは全て偽装であり,実際に乗ったのは全て安田だったんですね。

全て,石田の指示で動いていたというわけです。

では『あさかぜ』で佐山とお時を目撃したのは本当なのか。実はこれも安田の企みでした。

安田と一緒にいた女中たちに,佐山とお時をわざと目撃させたのです。

佐山あのたった「4分間」の間に。この4分間が,佐山とお時が一緒にあさかぜに乗車したという先入観を与えたわけです。

そして福岡での事件も,佐山とお時は恋仲の関係で「無理心中」というふうに見えるというわけです。

ん~,よく考えられているなぁ。

では,佐山が持っていた「一人分の領収書」の意味は領収書これはさらに驚くべき事実がありました。

実は佐山とお時は全く別の人間に殺害されていたのです。共犯者による犯罪でした。

一人は安田です。彼は東京発福岡行の飛行機で「お時」と落ち合います。

そして何も知らないお時を香椎海岸まで連れて行き,青酸カリ入りのウィスキーで殺害するのです。青酸カリ入りウィスキーこの時点ではお時の遺体しかないのです。

そしてもう一人の遺体である佐山はどうしたのか。

彼を殺害したのは,安田の妻の亮子でした。

「安田の代理だ」ということで佐山を香椎海岸に呼び出します。

そしてお時と同じように青酸カリのウィスキーで殺害。

死因も同じで,おそらく同じ青酸カリを使用したのでしょう。

最後の仕上げは,佐山の遺体とお時の遺体を密着させた

何という殺人計画なのか。。。別々の殺人を,一つに見せかけるなんて。。。

警察を欺く犯罪だから警察が「無理心中」と断定しても仕方ないんですね。

鳥飼が考えた仮説,そしてそれを証明するために奔走した三原。

立場も違う二人が解決した事件だったのではないでしょうか。

福岡で起こったはずの事件の犯人が、なぜ北海道にいたというアリバイを手にすることができたのか、そこが焦点となりました。

汚職に関わっているということで消されてしまうということはよくあるのだろうし、その濡れ衣を着せられるのは課長などの中間管理職であるという、時代を感じさせる内容でした。

保身のために部下を貶める行為、企業存続のために他の人間に借りを作ろうとする行為。

上司の言いなりそのために殺人を犯すことは許せないし、私利私欲によって動く人間というのは今も昔も変わらず存在するのだなと考えさせられました。

今の世の中からするとだいぶ昔の話で、時代錯誤に陥りそうだが、今読んでも全く見劣りがしない。

松本清張の奥深さを感じたし、そして文章も読みやすいでした。

他の作品もどんどん読んでみたくなるような作品です。

この作品で考えさせられたこと

● 汚職という社会問題を背景に描かれた作品

● 最後の衝撃のトリックに驚いた

● 現在ほど交通の発達していない1950年代の作品の面白さ

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