「湊かなえ」さんのデビュー作にて,第6回本屋大賞受賞作品です。
2008年に発表したこの「告白」は,2010年に松たか子さんか主演した映画によってさらに売り上げを伸ばし,売上累計300万部というとんでもない作品になっています。
目次
1. こんな方にオススメ
2. 作者の経歴
3. 本作品 3つのポイント
3.1 ホームルームでの告白
3.2 少年たちの母親の存在
3.3 究極の復讐
4. この作品で学べたこと
● 教師が最後のホームルームで最後に話した「告白」を知りたい
● 少年犯罪を護っている「少年法」について知りたい
● 本作品最後の衝撃の結末を知りたい
「愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」我が子を校内で亡くした中学校の女性教師によるホームルームでの告白から、この物語は始まる。語り手が「級友」「犯人」「犯人の家族」と次々と変わり、次第に事件の全体像が浮き彫りにされていく。衝撃的なラストを巡り物議を醸した、デビュー作にして、第6回本屋大賞受賞した国民的ベストセラー。
-Booksデータベースより-
1973年生まれ 武庫川女子大学家政学部被服学科卒業
アパレルメーカー勤務,家庭科教師などを経験
結婚後に作家としてデビューされました
主な受賞歴
2009年本屋大賞(告白)・日本推理作家協会賞(贖罪,望郷)・山本周五郎賞(ユートピア)など
「告白」は,松たか子さんの迫真の演技を一度見てしまってからは,この作品のことはずっと忘れられないものになっています。
湊かなえさんの作品の中でも,デビュー作にて最強の作品かもしれません。
この作品は主人公である森口悠子が,自分の一人娘を亡くしてしまいます。
その犯人が「A」と「B」という二人の人物であると「告白」するところから話は始まります。
1⃣ ホームルームでの告白
2⃣ 少年たちの母親の存在
3⃣ 究極の復讐
森口の一人娘である愛美が亡くなったのは「このクラスの生徒に殺されたから」という告白。ホームルームで突然語りだす森口は,教師を辞める覚悟でした。
そもそも森口は,恋人であり,愛美の父親でもあった桜宮という男性から「HIV」に感染していると打ち明けられたため,一人で愛美を育ててきました。
森口自身は桜宮と三人で生活したいと思ってたようです。
ただ,桜宮は優しい人間で,HIVに感染させたくないという気持ちで籍を入れないんですね。
そんな中,森口は愛美を保育所で預かってもらっていましたが,仕事が遅くまであったため,預けることができなくなりました。
そこで,保健室で愛美を待たせることになってしまっていたんです。
ところがある日,愛美がプールで亡くなっているのが発見されます。
ここで生徒AとBの存在が出てきます。
Aはポシェットに感電装置を入れ,Bとともに愛美にそれを触らせ,感電のショックで気絶するんです。そしてそのままプールへ。。。
追及されたAはむしろ自分が危険人物になれたということで喜ぶという,ちょっと普通では考えられない少年でした。
森口は彼らに復讐するため,桜宮の血液を採取し,それをAとBの牛乳に仕込んだと,ホームルームの中で話すのです。
「自分の娘が殺害されたこと」
「HIVに感染させるために少年たちに牛乳を飲ませたこと」
恐ろしい「告白」とともに去っていく森口の姿に引き込まれてしまいました。
少年Aは修哉,少年Bは直樹といいます。
直樹の母親は思い込みの激しい,そして自己中心的な母親でした。
森口に対しても,自分の息子(直樹)は被害者だと思い込んでる節がありました。
あの「告白」のせいで,根拠もなく直樹が悪者扱いされたからという言い分です。
直樹の母親はその時は真実を知らないですから,そう思い込んだのですね。
しかし,直樹は自分がHIVに感染していること,愛美を殺害してしまったことを母親に告白され,母親は絶望したのでしょうか。
直樹とともに心中しようとします。
直樹を護ろうと思ったからなのか。それとも自分自身のプライドからなのか。
母親は逆に直樹にナイフで刺され,亡くなってしまいます。
そして,直樹は精神的なショックからか記憶喪失のような状態になってしまいました。では,修哉の方はどうなんでしょうか。
修哉の母親はとても優秀な女性だったらしく,研究者でもありました。
しかし,両親が離婚してしまいます。彼は母親に対して深い愛情を感じてました。
修哉は何とか母親に振り向いてもらおうと,新たな研究を始め,発明コンクールに「びっくり財布」を開発して特別賞を受賞します。
しかし,受賞しても母親は振り向いてはくれず,さらに注目を浴びたいという理由で愛美を殺害したのです。
本当に許せない少年です。
母親に認めてもらいたい,気にしてもらいたい
自分中心的な理由で修哉は悪事を繰り返してきたのです。
母親が振り向いてくれないことから絶望になったのでしょうか。
修哉はある計画をしていました。
ここからがこの作品の大きなポイントになります。
かなり衝撃的なので,実際に本を読んでみてください!
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修哉が計画していたこととは。
二学期の始業式で,演台の中に起爆装置付きの爆弾を仕掛けていたんですね。
そこまでして母親に気にしてもらいたかったのでしょうか。
少年に大きな影響を与えていたのは,実は「母親の存在」だったんですね。
ところが,修哉の望んだとおりの展開にはなりませんでした。
とうとう森口の「真の復讐」が幕を開けるのです。
修哉が起爆装置のスイッチを押した瞬間。。。
何も起きませんでした。あれ? といった修哉の表情が目に浮かびます。
そして,修哉の元に一本の電話が入ります。その相手とは。。。
森口でした。森口は爆弾装置の存在に気づき,別の場所に移していました。
それは,修哉の母親の大学の研究室でした。それを電話で告げたのです。
そもそも森口は最初からこの瞬間を待っていたように思います。
直樹が精神的におかしな状態になることも,修哉が自分の手で母親のいる研究室の爆弾スイッチを押させることも。
いや,実はそのスイッチは,最初のホームルームでの「告白」にあったのではないでしょうか。
最初のホームルームでの「告白」は,実は復讐のプロローグに過ぎなかったのだなと思いました。
ふと「天網恢恢疎にして漏らさず」という言葉を思い出しました。
作家の伊坂幸太郎さんが作品の中でよく使うする言葉です。
罪を犯した人間にはそれなりの罰が下される。
修哉たちのやったことは許されないことで,それ相応の仕打ちが必要であると。
自分の娘を実験台のように殺害された怒り,そして復讐心。
復讐したいと思うことには森口には同情はするけど,本当は許されないことだとは思います。
本来であれば修哉たちのしたことを裁判にかけ,法の下に裁くことが正しいのだと思います。
森口が少年たちを裁判にかけなかったのには理由があったのだと思います。
それは「少年法」です。
小学生は未成熟であるとして,殺人を犯しても刑事責任を問われません。
もちろん少年法に護られているといっても,成長する過程で「後ろ指さされながら」生きていくことにはなるとは思います。
しかし,愛娘を亡くした母親の気持ちはそれだけでは治まらなかったのでしょう。
未熟な子供を育てた母親にも責任があると。
そして,彼らがこの世に生きていること自体が許せないと。
● 一人娘を失った母親の絶望感,そして復讐心
● 14歳未満の刑事犯罪は,「少年法」により護られているということ
● 少年たちの犯罪は,親との関係性の希薄さが原因になることがある
そこまで考えて二人の少年だけでなく,その母親までも自分の手で裁こうと思ったのでしょうか。
作者の湊かなえさんはどう考えて描いたのでしょうか。
いずれにしても,子供を亡くした復讐心はとてつもなく大きかったのだと思います。