最近,また南海トラフ地震が発生した場合にどうすべきか,どこの住民が,どれだけの数の住民が避難すべきなのか,ということが新聞でも目にするようになりました。
もういつ起きても不思議ではないという状況なのでしょうか。地震が起きるたびにそんなことを考えるようになりました。
東北大震災では原発の電源供給がされずに二次災害が起こってしまいました。あれから10年以上が経ったんですね。
今回の話はその原子力発電所がテロの標的になってしまうという話です。
「銀河」という新しく巨大な原子力発電所の建設が富山県の海沿いで行われました。
この原発をテロリスト達が何のために乗っ取ろうとしているのか,そしてテロリストたちの狙いを阻むことができるのかがポイントとなっています。
目 次
1. こんな方にオススメ
2. 本作品 3つのポイント
2.1 高速増殖炉が乗っ取られる
2.2 テロリストたちの正体とは
2.3 原発破壊の真の目的
3. この作品で学べたこと
● 高速増殖炉のメリット・デメリットについて知りたい
● テロリストが原発を制圧した目的を知りたい
● 日本の原発の歴史について学びたい
原発がテロの標的に…日本を空前の大危機が襲う!
日本海側に建設されたばかりの世界最大の原子力発電所が、謎のテロリスト集団に占拠された。汚染ガス放出の予告を前に、日本は何ができるのか? 最新知識を盛り込み世に問う衝撃作。
-Booksデータベースより-
1⃣ 高速増殖炉が乗っ取られる
2⃣ テロリストたちの正体とは
3⃣ 原発破壊の真の目的
高速増殖炉が乗っ取られる
舞台となっている富山県では,原発建設に対し住民は反対していました。しかし,国は富山の住民たちの同意を得るために多額の金をつぎ込み,さらに立ち退きの利権に目を付けた暴力団関係者にも大金を払って説き伏せました。
そこまでして建設に「GO」がかかった原発がテロリストたちに乗っ取られるのです。
本作品は,高速増殖炉型の原発である「銀河」をコンピュータ制御する「ソクラテス」というシステム開発に携わった科学者である滝沢が主人公です。
この「ソクラテス」は,人為的なミスを極限に少なくし,ほぼ自動化して運用されるシステムです。
これまでの原発事故は人為的なミスが多いということらしいので,自動化を目指しての開発が行われていたということなんですね。
ただ,システムの自動化というと聞こえがいいですが,これが何者かに乗っ取られると大変なことになります。
そして,とうとう恐れていたことが起きてしまいます。「ソクラテス」が乗っ取られてしまうのです。
開発者しか知らないはずのプログラムをテロリスト達がなぜ盗むことができたのか?
どうやら今回のポイントはその人物が誰なのかというところのようです。
そもそも高速増殖炉とは普通の原発とどう違うのか。専門家ではないですが,どうやら消費する核燃料から生成される核燃料の比率が大きくなるという仕組みで,限られた資源で効率よく発電することができるようです。
その反面,大量のプルトニウムを使用するため,その制御が難しいというデメリットもあるとのこと。つまり原子炉内が「臨界」という状態になってしまえば,その核分裂反応をストップさせるのは相当難しいということです。
その高速増殖炉がテロの標的になれば,チェルノブイリの時のような大事故が起き,日本を震撼させる事態になるというのは想像できます。
ではこのテロリストたちは,一体何者なのでしょうか?
テロリストたちの正体とは?
テロリストは「アルファ」という日本の宗教団体と,ロシアのチェチェン独立を目指す人たちでした。原発を利用して日本とロシアを脅迫しようとする両方の利害関係が一致したテロだったんですね。
「銀河」と「ソクラテス」を組み立て,起動されたら大変なことになるという状況の中,臨界に達した原発に何かあれば日本中は放射能の海となってしまいます。
そしてそれが世界中に広がってしまえば日本は大変な立場に追い込まれるということです。
原発を「人質」にとったテロリストに対し,日本側も動きます。
まずは警察の「SAT」が原発に乗り込んでテロリストを制圧しようとします。ところが,テロリストの予想以上の攻撃力に全滅させられてしまうのです。そして徐々に高度な攻撃を仕掛けていきます。
次は自衛隊です。あまりの手強さに政府の命令で自衛隊が動くのです。
ところが,相手にはその予想が立っていたのでしょうか。あっと言う間に壊滅させられます。
戦車の出動,そしてF15戦闘機まで使用します。しかし,いずれも撃沈されてしまうのです。テロリストは日本側の想定以上の攻撃力を保持し,次々と壊滅させられます。
それもそのはずです。テロリストたちの武器はすさまじいものでした。
ロシアから手に入れた武器。機関銃だけでなく,ロケットランチャー,地対空ミサイルランチャー,手榴弾,ロケット弾などなど。
原発内への侵入者だけでなく,地上から,そして空からの攻撃にも全て対抗する準備を整えてきたということです。日本側もその武装力を知らずに立ち向かっていったわけですから,反撃することすらできなかったのでしょう。
完全にテロリストの手の内にいる状況の日本軍。
滝沢はグループを組み,この原発内に侵入するという決断をします。原発の暴走を止めるのは自分しかいないと。
原発を制御する「ソクラテス」の開発者自らが突入する覚悟でした。
そして滝沢たちは,とうとうテロリストの黒幕と遭遇するのです。
原発破壊の真の目的
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そもそも今回の作品で,日本がテロリストに要求されたこは何だったのか?
それは,ウクライナにある弾道ミサイルをイランへ運ぶということでした。それを日本の首相はロシアと秘密裏に了解してしまったのです。そんなことをもしアメリカが知ったらそれは大変なことになりますよね。
同盟国であるアメリカが,日本が大敵であるロシアと勝手に密談するなんて許されるはずがない。
しかも北方領土のうち2島を譲渡する条件を受け入れてました。
ん~,ここまで来ると現実離れしてる気がしますけど,ないとはいい切れないのかな。
そして真の目的が明らかになります。
滝沢の恩師でもあるパブロフが最後の黒幕でした。「人類を滅亡させるため」だと。
地球上から現在の生命体を排除し,その後新しい生命体へと生まれ変わっていく。
何という恐ろしい目的。自分勝手に地球に生存し,環境を壊してきた人間たちを一旦排除し,新しい生命体が地球で生活していくようにするということです。
そんなことが本当にできるかどうかはわかりませんが,これが原発を利用した恐ろしい目的でした。
作品の中にはこれまでの原発建設の歴史にも触れています。
原発の恐ろしさというのはやはり放射能です。
かつてチェルノブイリやスリーマイル島(アメリカ)での原発事故により,多くの人間がその影響で亡くなってしまいました。
日本でも東海村で同じようなことが起こりました。やはり原発は廃止すべきなのでしょうか。
しかし現在の日本は原子力発電による電気を利用していたという歴史があります。
確かに東北大震災後に稼働している原発の数はだいぶ減りました。
ほとんどが「廃止」か「停止中」ですが,現在,再稼働中のものもあります。おそらく地震の危険性が少ないところでしょう。
私たちにとって必要な電気を供給してくれる原発。利用していながらそれに反発する国民は多いのだと思います。
「そもそもなぜ原発を建設推進してきたのか」と言う人もいます。
原発を廃止して放射能などのリスクを回避しようとする者,原発に頼りつつもそのリスクを考え対処しようとする者,日本経済のために原発を推進する者,いろいろな立場があるのだとは思います。
本当に原発の問題は難しいです。一度原発を推進した日本が別のクリーンエネルギーを開発できない限りはこの問題は尽きないのかな。
原子力発電以上の効率で発電できる画期的な方法って何があるのでしょうか。
本作品の作者がかつて研究していた「核融合」?
宇宙空間からの太陽エネルギーの転送?
今回の作品を読んで,改めて異常事態になった時の原発の恐ろしさ,そして新しいエネルギー開発の必要性を深く考えさせられました。
● 高速増殖炉のメリット・デメリットを学べた
● 日本が原子力発電を推進し,現在は停止・廃止している現状を知ることができた
● 改めて,原発が異常事態になった場合の怖さを考えさせられた