東野圭吾先生の初期の作品で,とても衝撃を受けた作品でもあります。かつては殺人事件を描き,そのトリックなどを重要視していた感じのあった東野先生の作品では,僕にとっては1,2位を争うくらいの作品です。
ネットを見ても,本作品についての考察を書かれたサイトはたくさんあります。
それを読むと,いかに本作品が「なぜ評価されているか」がわかります。
ストーリーの途中から,何かしらの違和感を感じながら読み進め,「ひょっとして。。。」と思いながらの結末に,「あぁ,そういうことか。。。騙された!」と唸った記憶があります。
一体僕自身は何に騙されたのか。とにかく衝撃的な作品です。
目 次
1. こんな方にオススメ
2. 登場人物
3. 本作品 3つのポイント
3.1 別荘に監禁された人々
3.2 雪絵を殺害した犯人?
3.3 衝撃の結末
4. この作品で学べたこと
● 主人公の婚約者がなぜ亡くなったのかを知りたい
● 最後の最後に判明する衝撃の結末を知りたい
8人の男女が集まる山荘に、逃亡中の銀行強盗が侵入した。外部との連絡を断たれた8人は脱出を試みるが、ことごとく失敗に終わる。恐怖と緊張が高まる中、ついに1人が殺される。だが状況から考えて、犯人は強盗たちではありえなかった。7人の男女は互いに疑心暗鬼にかられ、パニックに陥っていった……。
-Booksデータベースより-
樫間高之・・・主人公。ビデオ制作会社を経営
樫間朋美・・・高之の妻。事故で亡くなる
森崎伸彦・・・朋美の父。森崎製薬の社長
森崎厚子・・・伸彦の妻
森崎利明・・・朋美の兄。
下条玲子・・・伸彦の秘書
篠雪絵・・・・朋美の従妹
1⃣ 別荘に監禁された人々
2⃣ 雪絵を殺害した犯人?
3⃣ 衝撃の結末
樫間高之は、ビデオ制作会社の社長をしていました。ある日,車を運転している時,急ブレーキを踏んだ際に,森崎朋美の乗る車に追突されてしまいます。
そして朋美は左足の先を失って義足となってしまいました。朋美はバレエをしていました。ところがこの事故によってバレエを続けることが出来なくなってしまったのです。
あまりの絶望に,朋美は自殺を図ります。しかし偶然に高之が見舞いに来たことで,止めることができました。
それから高之と朋美は意気投合し,二人は交際をはじめることになったのです。
交際も順調に続き,二人は事故から2年後に結婚することになります。
婚約していた2人は結婚式を数日後に控えていました。しかし,ここで事件が起こります。
運転していた朋美の車が,誤って崖から転落してしまいます。そして朋美はとうとう亡くなってしまったのです。結婚式を控えており,さらに事故の目撃者もいたことから,事件や自殺とは考えられません。
さらに朋美は当時生理痛で,ピルケースの中に鎮痛剤を服用していましたが,そのピルケースの中には2つの鎮痛剤が入ったままでした。
これらの状況から警察は「居眠り運転での事故」と断定したのでした。事件から3ヶ月経った頃,高之は朋美の父親である森崎伸彦から「別荘へ来ないか」と誘われます。
どうやら「朋美を弔う会」のようなパーティーをしようと言うのです。
高之は伸彦を通じて仕事を受けているということもあり,何か違和感を感じつつも別荘へ行くことにします。別荘には森崎家の親戚が集まっていました。
伸彦の妻である厚子,朋美の兄の利明,いとこの雪絵や木戸という男,さらに朋美の親友もいました。
別荘を舞台にした殺人事件は,東野先生の作品にもいくつかあります。
まさに恐ろしいことが起きそうな予感がプンプンします。
いとこの雪江が高之に話しかけます。「何か変な物音がする」と。
彼らはキッチンへ向かいます。そこには思ってもない人物たちがいました。
「騒ぐな,静かにしろ!」
ジンとタグという「銀行強盗犯」でした。彼らは逃走中にこの別荘を見つけ,侵入してきたようです。彼らには仲間がいるようでした。その「3人目」の強盗犯がやってくくるまでこの別荘にとどまるようです。
別荘にいた森崎家の関係者全員が一ヶ所に集められます。
完全に拉致された滞在者たち。しかしここで呼び鈴が鳴り響きます。
どうやら警察が一帯を捜索しているようで,強盗犯がいないか調べていました。
伸彦の秘書である下条玲子は「SOS」という文字を地面に書いて警察に感づかせようとします。ところがこれがうまくいきません。
しばらくして,再度警察が訪れます。「SOS」に気づいたのでしょうか。
しかし,肝心の「SOS」の文字が消されてしまっていたのです。「一体,誰が。。。」強盗が「SOS」の文字を消したのであれば,誰が書いたのか問題になるはず。
森崎利明もタイマーを使って別荘内を「停電」させようという計画を立てますが,これも失敗に終わります。
強盗たちは今回もこの「タイマー」を問題にしません。計画したものが全て打ち消され,強盗犯人も問題にしなかったということは,別荘にいた人間の中に「裏切者」がいるということなのかでしょうか。
「本当に,強盗犯以外に裏切者がいるのか?」
そしてとうとう殺人事件が発生してしまうのです。
拉致された森崎家の一族。
強盗犯の一人である「タグ」が何者かに睡眠薬を盛られたようで,眠ってしまいます。
困ったもう一人の「ジン」は,一人では手に負えないと,森崎厚子だけを人質にし,それ以外の面々を各部屋に戻し,施錠して監視することにします。自分の部屋に戻った次の日の朝,雪絵が何者かに刺されて亡くなっているのが発見されます。
部屋の中から鍵が掛けられているはずなのに。。。これは密室殺人なのでしょうか。
雪絵は日記をつけていたようです。その中の「朋美が亡くなった日」の部分が破られていました。ん? この日記に何か大きな秘密があったのか。その秘密を知られたくない何者かの仕業なのか。。。
いや,それとも雪絵は高之のことが好きで,朋美が邪魔だったのではないか。
そのことを知った犯人が復讐のために雪絵を殺害したのではないか。
ここで3人目の強盗犯である「フジ」が到着します。しかしこの「フジ」が不気味なんですよね。別荘にいる人間の前に姿を現さないし,声すらも発しないんです。
コソコソとジンとタグと話をする「フジ」の存在。一体何者なのでしょうか。
そして強盗犯たちは「もし殺人犯がわからなければ,別荘の人間たちを全員殺害し,逃走する」と言い出すのです。
この発言により,高之や森崎家の面々は疑心暗鬼になっていたようでした。
そして本当に「自分たちの中にいる犯人」を探し出そうとするのです。
探偵役としてその中心になったのは,伸彦の秘書である玲子です。
自分が書いた「SOS」の件,「停電計画」の状況を整理します。
「SOS」という文字を確認できる可能性のあった人物,停電計画のタイマーを最後に見に行った人物が一人だけいました。
それは,朋美の父である伸彦でした。やはり伸彦は,自分の娘を事故とみせかけ殺害されたと思い,その復讐で雪絵を殺害したのでしょうか。
玲子は伸彦をさらに追及します。
朋美が死んだ日,伸彦がピルケースを確認した時には「鎮痛剤」は入っていなかった。
しかし,雪絵がピルケースを触った後には,なかったはずの鎮痛剤があった。
つまり,ピルケースの鎮痛剤を入れ替えることができたのは雪絵であり,ピルケースには元々「睡眠薬」が入っていた
そして伸彦はとうとう罪を認め,窓から飛び降りてしまうのでした。
これで一件落着,と言いたいところですが,実はこの先がありました。
本作品の衝撃はここからなのです!
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雪絵を殺害したのが朋美の父である伸彦だと判明し,事件は終息を迎えようとしていました。
ところがここから衝撃の事実が明らかになります。
強盗犯たちは安心したのか,森崎一族を各部屋に戻します。
しかしなぜか高之だけは人質として拉致されるのです。
「なぜ高之だけが。。。?」そこへ意外な人物が現れます。何と,あの「伸彦」でした。
「えっ? 飛び降りて亡くなったんじゃなかったの?」
そして伸彦が語り始めるのです。
確かに雪絵を殺害したのは伸彦のようです。しかし,雪絵が殺害される時に雪絵は伸彦に言ったのです。
「私は殺してない。でも同罪ですね」
と話し,日記の1ページを飲み込んだようなのです。
ピルケースに鎮痛剤を入れたのは雪絵でした。しかし同時に彼女は真犯人の存在を知ったようなのです。
その人物を守るため,庇うために飲み込んだのではないか。これが伸彦の推理でした。
この後,高之が思いもかけない行動をします。何と伸彦の首を絞めようとしていたのです。その理由は,高之は朋美よりも雪絵のことが好きだったのでしょう。
愛する雪絵を殺害した伸彦を許せず,首に手をかけた。。。
ここで別荘に突然明かりが点きます。
そこには玲子や利明などの森崎家一族だけでなく,強盗犯のジン,タグなどもいます。
そして驚いたのはあの「雪絵」もいたのです。
は? 一体,どういうことなの?
結論から言うと,朋美を殺害した真犯人は主人公の高之だったということです。彼がこの別荘に呼ばれたのは,高之の犯行を証明するために仕組まれた「劇」だったということです。
朋美の両親の伸彦と厚子,そして雪絵以外は全て本物の「役者」だったのです。
えーーーーーっ!まさに主人公が高之であるという演出。そして本作品の真犯人も高之であったと。
実は,朋美は事件当時,鎮痛剤が取り換えられていることを知っていました。
高之に取り換えられたという絶望感から睡眠薬は飲まず,彼女は自殺したのでした。
何という悲しい事件。
いずれにしても,高之は自分で「真犯人」であることを証明してしまったのですから,言い逃れはできないでしょう。
「どうして,朋ちゃんを裏切らないでって約束したのに。。。」という雪絵に対し,高之は言い放ちます。
「もう幕だろ」と。
最初は,一体強盗犯は何者で朋美の事件と何かしら関係あるんじゃないか,とか,実は森崎家の中に真犯人がいるんじゃないかとか,いろいろと考えながら読みました。
最後の最後に起こった衝撃には正直唖然としてしまいました
ネットで,他の人たちは本作品の結末に対して何を思っているかも調べたりしました。
僕自身と同じで衝撃を受けた人,予想通りだったという人,いろいろでした。
この作品を作り上げた東野先生は,本当によく考えて作られたと思います。
伏線を張り巡らしながら,真犯人が真っ先に判明しないように気を付けながら描かれていたのが,後になって伝わります。
難しかったと思います,この作品を描くのは。だから多くの東野圭吾ファンが推す作品なんですね。
● 最後の結末は衝撃の一言
● 東野先生が神経を張り巡らして作り上げた作品であることがよくわかりました
● ネット上の反応もいろいろで面白かったです