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【ラプラスの魔女】東野圭吾|物理現象を予知する少女

ラプラスの魔女

大学時代に「ラプラス変換」ってものを習いました。かつて数学者のラプラスという人が提唱したものです。

これ,説明するにはあまりにも難しすぎますが,時間によって変化するものを計算する際,ラプラス変換を使うと簡単に解けますよ,ってことなのかな。

高校時代に取り扱うことがないし,大学でも理系でしか学ばないと思うので,相当難しいものだと思います。

実はラプラスはある言葉を残していて

世の中の様々なものの現在の状態,周囲の環境や経験則によって未来が読める

と言ってしまって,大変なことになってしまいました。

過去はわかっても,未来のことはわかるわけではないじゃないか,と多くの人に「悪魔」と批判されたんですね。

この発言で,彼は「ラプラスの悪魔」と呼ばれたそうです。

東野圭吾先生は物理学を専攻されていたらしいんで,このラプラスのこともかなり詳しいでしょうし,相当リサーチもされたのかなと思います。

本作品は,ある「悪魔のような能力」を持った少年を,同じ能力を持った少女が追うという話になっています。

2018年に映画化されました。桜井翔さん,広瀬すずさん,福士蒼汰さんと豪華キャストです。

こんな方にオススメ

● 「ラプラスの魔女」が何を意味するか知りたい

● 特殊な能力を持つ人物が登場する物語を読んでみたい

● 二転三転する事件の真相を知りたい

作品概要

遠く離れた2つの温泉地で硫化水素による死亡事故が起きた。検証に赴いた地球化学研究者・青江は、双方の現場で謎の娘・円華を目撃する――。東野圭吾が小説の常識をくつがえして挑んだ、空想科学ミステリ!
-Booksデータベースより-




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主な登場人物

羽原円華・・・主人公。まさに「ラプラスの魔女」

甘粕謙人・・・甘粕才生の息子

甘粕才生・・・兼人の父で,映画監督

青江修介・・・地球化学専門の大学教授

本作品 3つのポイント

1⃣ 温泉街で起こった事件

2⃣ 「ラプラスの魔女」とは

3⃣ 真犯人と事件の真相

温泉街で起こった事件

羽原全太朗という天才医師を父にもつ羽原円華。彼女の母親は円華の目の前で起こった竜巻事故により亡くなってしまいました。

現在は数理学研究所という施設で生活しています。

円華には特殊な能力がありました。天気の予測ができたり,物体がどのように動くのかなど,さまざまなモノおいて,時間が経過した後の予知ができるというのです。円華ん~,確かにラプラスの提唱した考え方みたいだな。。。

ある日,赤熊温泉で映像プロデューサーの水城義郎が,温泉街で発生した硫化水素ガスを吸って亡くなっていました。発見したのは,一緒に旅行にきていた妻の千佐都。

気になるのは,義郎に多額の生命保険がかけられたばかりだったというのです。

この事件のことを知った円華は,なぜか施設を抜け出してしまいます。何か思い当たることがあったのでしょうか。赤熊温泉赤熊温泉の事件を調査することになったのが,地球化学を専門とする青江修介という大学教授でした。

青江は疑問に思っているようでした。確かに硫化水素中毒が原因だろうが,温泉街のガスが通常の空気の含有量が致死量に満たないはずだと。

これは故意に発生した事件ではないか

ガスの量が予測できなければ,人が亡くなるはずがないと考えるんですね。青江教授青江が調査している間に,次の事件が起こってしまいます。やはり温泉街での事件でした。

苫手温泉で硫化水素による事故です。役者の那須野五郎という男性でした。

最初は映画プロデューサーで,次は役者。ん~,何か関係ありそうですね。

調査中,青江は一人の少女を見つけます。それが円華だったのです。

円華は誰かを探しているようです。それは「木村」という男。彼は赤熊温泉にも行っていました。

調査をしていた青江。亡くなった二人の共通点を見つけ出します。それは甘粕才生という映画監督でした。甘粕監督実はかつて,甘粕の娘が発生させた硫化水素ガスで妻と息子も巻き込まれていました。

それが原因で息子の謙人は植物状態になってしまい,羽原全太朗の手術にて,さらに記憶喪失になってしまいます。

甘粕監督の動機は十分ですね。

青江は刑事の中岡と捜査をすることになります。そこで大きな手掛かりを入手します。

それは「木村」の写真で,しかもその顔が甘粕監督の若いころにそっくりなのです。

ひょっとして,犯人は甘粕謙人? でも植物状態で,記憶喪失なのでは?

この後,新しい事実が明らかになります。

「ラプラスの魔女」とは

甘粕監督の息子・謙人。実は円華がいた施設「数理学研究所」で生活していました。

謙人は普通の人間が生活できるレベルまでに快復していたようなのです。ところが研究所の人間の目を盗んで,行方をくらましてしまいました。

数理学研究所ということは,円華は謙人を追ったのでは? 硫化水素の事件も謙人が絡んでいると睨んだのではないか。

甘粕家に何かあったのではないか。

甘粕監督のブログを見ると,幸せそうな家族生活を送っていたようなんですが,どうやらそこには裏があったようなんですね。

まず,甘粕の娘は実は血がつながっていなかったようです。

他の人の証言を聞くと,甘粕監督の妻との仲はあまりうまくいっておらず,謙人や娘も父親のことを慕ってはいなかったんですね。

つまり,甘粕監督のブログは「嘘の情報」も入っているようなんです。なぜ嘘をつく必要があるのか。

青江は円華と会うことになります。そして衝撃の現象を目撃するのです。

円華の足元にあるドライアイスの煙が,青江のいる場所に漂ってきて,しかも青江自身を取り巻いてしまいます。

円華の能力を使ったからこそできた現象。ということは,硫化水素ガスも同じように操れば人を殺めることができるのではないか。

円華と同じ能力を持っている人間が一人いました。謙人だったんです。甘粕謙人先に,謙人は「手術を受けた」という話を書きましたが,実は円華もこの手術を受けていました。

円華はこの手術で「ラプラスの魔女」になったのです。そして円華と同等の能力を身に着けたのが謙人でした。

なるほど,だから円華は謙人を追っているんですね。硫化水素ガスの事件は間違いなく謙人の仕業だと。

もし,この世に存在するすべての原子の現在位置と運動量を把握する知性が存在するならば,その存在は物理学を用いることでこれらの原子の事件的変化を計算できるだろうから,未来の状態がどうなるかを完全に予知できる

果たして,真犯人は誰なのでしょうか。

真犯人と事件の真相

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犯人は謙人なのではないか。犯行ができるのはまさに円華以外では謙人しかいないのです。

確かにそれぞれの温泉街で殺害する動機が謙人にはないように思いましたが,そうではありませんでした。

それは甘粕一家が殺害された事件に遡ります。

この事件の真犯人は甘粕監督で,温泉街で殺害された水城と那須野は共犯者だったのです。

共犯者謙人は記憶喪失と書きましたが,実は記憶喪失の「フリ」をしていたのです。

温泉街の事件は謙人の復讐でした。

謙人は温泉街で亡くなった水城義郎の妻・千佐都と関係を持ちます。

つまり,千佐都は水城の保険金欲しさに,謙人の言われるがままです。そして,水城,さらに別の温泉街で那須野を殺害しました。

では,甘粕家の事件の真相とは何だったのか。

硫化水素ガスを使った自分の娘が,甘粕監督の妻や息子である謙人と殺害しようとしたというのは実は嘘でした。

犯人は先に書いたように自分以外の家族全員を亡き者にしようとした甘粕監督でした。

ではなぜ甘粕は家族を亡き者にしようとしたのか。

それは甘粕自身が「父性欠落症」だったのです。ん~,初めて聞く病名。。。

まさに言葉の通りで,甘粕には自分の家族を守ろうという意識が欠落していたのです。

先天的な,そして遺伝性もある欠陥だそうです。ある意味,サイコなのかなとも思ってしまいます。

さらに甘粕自身は「完璧主義者」でした。それが自分に対してではなく,彼の場合は他に対しても完璧を求めていたようです。

そのストーリーすらも映画にしようとする傲慢さ。

だから容赦なく家族を殺めたと。なんという恐ろしい男。。。

そして謙人と父親・才生との対決。謙人は廃墟に父親を呼び出していました。

謙人は未来を計算する能力がありますから,この廃墟には何かが起こることを確信していたのです。甘粕謙人そして突然とてつもない風が廃墟に入り込んできます

ダウンバーストです。発生した積乱雲から下降してきたすさまじい気流が地面に落ちてきたのです。

ダウンバースト謙人はこれを予測していたのです。父親を道連れにしようと考えていたのでした。

廃墟の天井が二人に落ちてきます。まさに万事休す。

しかし,これを予測できた人物がいました。そう,円華でした。

このダウンバーストの起こる直前,車を廃墟に突っ込ませていました。建物の屋根が一部損壊していたことで,天井の一部が吹き飛んでいたのです。円華の能力つまり,天井の衝撃が半減するように仕組んでいたわけです。

とどめを刺そうとする謙人を円華は止めます。

後日,温泉街の事件は青江と警察のつながりによってもみ消されました。

しかし,命を取り留めた甘粕監督は一家殺人の秘密を握られたため,病院内で首を吊って亡くなりました。

今回の話は,その「悪魔のような能力」を持った少年を,同じ能力を持った少女が追うという話でした。

硫化水素を使った連続事件に、その少年が関わっているのか。その動機は何なのか。

人間って,それぞれ個性があって,どんな人にも生きる権利もあって,それを剥奪することは誰にもできないと思います。

正直,僕自身は「世の中の進歩は,一握りの天才によって導かれる」と思っていました。でもこの作品を読んでそうとは限らないことがわかりました。

世界は,一見何の変哲もなく,価値もなさそうな人々こそが重要な構成要素であり、それが集合体となったときに大きな進化を遂げるどんな人間も重要な構成要素そういう捉え方もあるのだと,これまでの自分の考えを一蹴してくれる大事な作品でした。

物理学的に言えば,人間の最小構成要素は原子であり,その一つ一つが合わさったものが人間や生物であり,さらにそれらが構成するのが世界である。

いずれもなくてはならないもの,どれも欠けては存在しないものなのだ,ということだろうと思います。

この作品で考えさせられたこと

● ラプラスの魔女の意味を知ることができた

● 人間には不必要な者はひとりもいないということ

● 犯人の殺害動機には驚愕しました

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