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【ブレイクニュース】薬丸岳|SNSの恐ろしさを知る

ブレイクニュース

薬丸先生の作品は,奥が深いし,読みやすいので、とても好きな作家さんの一人です。

今回の「ブレイクニュース」は,YouTubeを使ってスクープを配信する一人の女性を描いています。一昔前はテレビや新聞でしか知ることができなかったことが,動画やSNSでも知ることができるようになりました。

かつては真実が報道されながらも,事実と異なることが報道されることがあったり,報道する側の勝手な解釈で視聴者が誘導されてしまったりしていたこともありました。

しかし,SNSの過剰な書き込みや炎上,フェイクニュースなど,時代は変わってもその本質は実は変わっていないのではないかとも思います。

今回の作品は,YouTubeというツールを使って真実を伝えようとする女性が,何を目的に配信しているのか,ということが一つの大きなポイントになっていると思います。

是非,読んでみてください!

こんな方にオススメ

● 「ブレイクニュース」とは一体何なのかを知りたい

● 主人公が動画配信する真の目的を知りたい

● SNSの在り方について考えてみたい

作品概要

YouTubeで大人気のチャンネル『野依美鈴のブレイクニュース』。児童虐待、8050問題、冤罪事件、パパ活の実情などを独自に取材し配信。マスコミの真似事と揶揄され、誹謗中傷も多く、中には訴えられてもおかしくない過激でリスキーな動画もある。それでも野依美鈴の魅力的な風貌も相まって、番組は視聴回数が1千万回を超えることも少なくない。年齢、経歴も不詳で、自称ジャーナリストを名乗る彼女の正体を探るべく、週刊誌記者の真柄は情報を収集し始める。すると意外な過去が見えてきて……。デジタル社会の現代へ警鐘を鳴らす、SNS時代の新たな社会派小説。
-Booksデータベースより-



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主な登場人物

野依美鈴・・・主人公。ブレイクニュースの配信者

真柄新次郎・・雑誌の編集記者。美鈴について調査する

北川詩織・・・美鈴の部下としてブレイクニュースを手伝う女性

本作品 3つのポイント

1⃣ 「ブレイクニュース」とは

2⃣ 主人公の真の目的とは

3⃣ 本作品の考察

「ブレイクニュース」とは

週刊誌の編集部に所属している真柄は,上司から依頼を受けます。それは「ブレイクニュース」という,野依美鈴が配信しているYouTubeの動画についてでした。美鈴はいろいろなスクープ記事を配信し,一本の動画が1000万配信を超える有名人となっていました。その美鈴を調査してほしいという依頼です。

一本で1000万視聴だとすると,単価が0.1円だとしても,100万円の利益です。おそらく年間にすると億を超える収入を得ているはず。真柄は「素人がニュースを配信するなど,たいしたものではない」と思っていました。

美鈴はいろいろな事件や問題に切り込んで,その当事者や関係者にインタビューをし,それを視聴者がどう思うのかと問いかけるような,まるでニュースのリポーターのようです。撮影しているのは樋口という男性で,彼は元々ひきこもりだったようですが,美鈴に声をかけられ,配信を手伝っています。

最近のYouTuberもこういう形が増えてきましたよね。YouTuberを中心に,撮影をする役割,動画の編集をする役割などに分担して,視聴者が食いつくような高品質な動画が増えてきました。

例えば「ひきこもり」の問題。これは最近さらに話題に上がるようになってきているような気がします。人間,最初からひきこもっているわけではなくて,例えば学校でイジメに遭ったり,親から虐待を受けたり,何かしらの問題が引き金となっているように思います。できるだけ人と接したくないという気持ちもわかります。でも逃げているわけではなく「生きたいから」ひきこもっているという考え方もあるのだなと,美鈴の問題提起の件を読みながら思ったりしました。

他にも,ある女性が襲われたということで一人の男性を訴えた事件もありました。男性は完全に容疑を否認し,証拠不十分で不起訴になったものの,その事実がSNSなどで取り上げられると,その男性は世間から叩かれるわけです。事実無根だと思われたこの男性の事件,実は裏があったりもするわけですが。。。

とにかく,恐ろしい世の中になったものです。一つのコメントが拡散され,あっという間に世界中に広がってしまうというのは,かつてインターネットが無かったころにはあまりなかったように思います。便利な世の中でありながらも,そのリスクというのは確実に人の命を奪ってしまうこともあるのだなと思ってしまいます。

どんどんファンを増やしていく美鈴ですが,それを良く思わない人たちもいるわけです。どんなに全うな人でも,叩く人は叩くのです。美鈴も例外ではありませんでした。
インタビューで,個人情報が拡散されることもありますし,その人物も叩かれる。

美鈴は何を目的にこの「ブレイクニュース」を配信しているのだろうかと思うわけです。

主人公の真の目的とは

美鈴はいろいろな問題の一つの中から「ヘイトスピーチ」について取り上げていました。

ヘイトスピーチとは

人の内的属性(人種、宗教、ジェンダーなど)に基づいて、ある集団や個人を標的とし、社会の平和をも脅かす可能性のある攻撃的言説を指します。

-国際連合広報センターサイトより-

ファミリーレストランで働く韓国人を貶める書き込みをしてしまった日本人女性。アルバイト中にあった少しのいざこざに対して,怒った女性がその事実を書き込んだのです。しかもレストランの名前や,韓国人の実名まで公開して。

これってとても危険だと思います。その書き込みに心を傷めた韓国人がどういう行動をするかわかりませんから。ひょっとしたら命を絶とうとするかもしれません。そんな重大なことまで発展するとは思わない女性は,自分がやってしまったことに対する懺悔として,自分の姿を公開するのです。

ここで美鈴は「罪のある人物は懺悔をさせる」という発言をします。これが美鈴がブレイクニュースを公開する理由なのか。でもその美鈴の動画によって,さらに心を傷める人だっているはず。そのリスクを美鈴はわからないはずがない。事実を公開することで,当事者に反省を促そうとする美鈴の真意はわかりましたが,ただ,もっと美鈴の核になる目的があるような気もします。

「pureblood」という組織も登場します。これはリーダーの考えに賛同する者たちが集まる会員制のようなグループ。詐欺グループではありません。世間の「悪を退治する」という形で個人を攻撃するグループなのです。良く言えば正義感を持った人物の集まり,悪く言えば数の暴力という感じでしょうか。そのグループのリーダーに辿り着くために,美鈴は切り込んでいくのです。

美鈴はこれまで関わってきた人たちを仲間にし,そのリーダーへたどり着くべく行動します。彼女が未知の世界に飛び込んでいく勇気というか,覚悟というのはどこから来るのだろうか。下手をすれば自分の身に何が起こるかわからないのに,堂々と切り込んでいくのです。怖くないのか。

ん~,やっぱりこの美鈴には何か思うところがあるような気がします。ただ多くのYouTuberが動画を配信を通して多くの収入を得たいという感じではないんですよね。

本作品の後半になっていくと,美鈴の本当の目的がわかります。それはある病院の医療過誤が原因でした。果たして,美鈴の真の目的とは何なのか?

本作品の考察

冒頭にも書きましたが,世の中は新聞やテレビの報道に加え,SNSという影響力の大きいツールが登場してきました。報道のプロが報じていたニュースも,技術の発達により,インターネットで簡単に世の中のことを知ることができるようになり,メディアの在り方も変わってきているように思います。

さらにはSNSの影響力は凄まじいなとも思います。誰かが悪意なく言ったことも過剰に反応した人々によって簡単に「炎上」することも多くなってきました。事件を起こせば,普通のメディアは伏せているはずの個人情報が簡単にさらされる。実名だけではなく,住所まで書き込まれてしまうのは,ある種の恐ろしさを感じます。

さらには心無い書き込みが大きな刃となって一個人を襲い,命まで奪ってしまうこともあります。一つのことを,一般人が裁いてしまっていいのだろうか,と。真実が書き込まれるのはわかりますが,それを拡大解釈してしまったり,悪意を持って嘘を書き込んでしまったり,正義感を振りかざし,世直ししているかのごとく書き込んだり。。。

まるで,自分たちが司法に成り代わり,成敗するというようにも感じます。

今回の作品を読みながら,主人公の目的は「真実をありのままに伝えること」がテーマなのかなと思っていました。でも実際には主人公には真の目的がありました。単に事件や社会問題にスポットを当てているというのは表向きだったんですね。

思うのは,多くのメディアには,まずは真実を伝えてほしい。そして片方に寄りすぎるのではなく,客観的に物事を見て,フェアに判断してほしいと思います。

人間だから,過ちを犯すことはあると思います。いろいろな意見があることもわかります。
でもそれを異常なまでに叩いてしまうのはどうかと思います。それで苦しんでいる人々がたくさんいるわけですから。

メディアだけでなく,SNSなどの在り方について,とても考えさせられる作品でした。

この作品で考えさせられたこと

● 主人公の真の目的が予想外だった

● SNSなどの在り方,利用の仕方について,とても考えさせられた

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