この作品の記事を書こうと思ったのは,3日前に信じられないような大事件が起こったからです。
2022年7月8日に,応援演説中の安倍晋三さん(元内閣総理大臣)が銃で撃たれ,亡くなったという悲報が入りました。ショックでした。
かつて内閣総理大臣の長期政権で活躍された方が突然こんなことになるなんて,本当に残念です。そんな追悼の意もこめて,今回記事を書くことにしました。
目次
1. こんな方にオススメ
2. 作者の経歴
3. 登場人物
4. 本作品 3つのポイント
4.1 日本の財政状況
4.2 歳出半減という政策
4.3 「オペレーションZ」の真の狙い
5. この作品で学べたこと
● 日本の財政状況のことを知りたい
● 本作品の「総理大臣の苦渋の決断」を知りたい
● 「オペレーションZ」とは何かを知りたい
大手生保会社が資金繰りのため国債を投げ売りする事態が発生、国債価格が暴落した。国債頼みの政治は、誰かが終わりにせねばならない……。国家予算を半減すべく、江島隆盛総理のもと若手財務官僚が集い、極秘作戦が始動する。しかし他省庁や与党守旧派が抵抗し、世論も猛反発、メディアの攻撃が渦巻くなか、総理はついに国会を解散する大博打を打つ──。息もつかせぬ緊迫のメガ政治ドラマ!
-Booksデータベースより-
総理大臣のことを描いている作品の記事を書こうと思い,思いついたのが原田マハさんが描いた「総理の夫」だったんですが,以前書いたので,今回は真山仁さんの「オペレーションZ」にしました。
本当は「ハゲタカ」から記事にしようと思ったのですが,順番が逆になりました。
今回の作品は,デフォルト(債務不履行)の危機にある日本をどう変えていくかのか。
総理大臣である江島隆盛を中心に描かれた作品です。
江島隆盛・・・内閣総理大臣。国家歳出を半減する提案をする
周防篤志・・・財務省官僚。オペレーションZ 政策のメンバーである
中小路流美・・一人息子のいるシングルマザー。実は秘密があった。
1⃣ 日本の財政状況
2⃣ 歳出半減という政策
3⃣ 「オペレーションZ」の真の狙い
まずは,日本の財務状況を簡単に説明したいと思います。
財務状況というのは収入・支出と言い方をしますが,国家財務ではそれを歳入・歳出といいます。約100兆円もの歳入の内訳は基本は税収ですね。
所得税・法人税・消費税で税収の約8割を占めるようです。
それ以外にも自動車税とかたばこ税とか諸々の税収併せたものが税収です。
それに対し,約60兆円の歳出の内訳はさまざまです。
社会保障費・地方交付税交付金・国庫支出金・公共事業費・防衛費など,それ以外にもたくさんあります。
歳入と比較して歳出が多いこの国家財政で,その差を埋めているのが日本銀行に発行させている「日本国債」です。
簡単に言えば,この国債によって日本の歳出・歳入のバランスをとっているわけです。
かつて国会の答弁で「日本は海外に借金しているんじゃない。日本国民に借金しているんですよ」と言ったのが,現財務大臣の「麻生太郎」氏です。
確か,野党の誰だったかは覚えてませんが,答弁している動画を見ました。
あの発言は,借金を海外にしているという勘違いをしている人へも含め,答弁していたように思いました。でも逆に言えば,国債というのは「赤字国債」という言い方もできるわけなのでしょう。
しかもそれは短期的に見ればという話で,いつかは,これまで国民に負担させてきた約1000兆円もの返済をしなければならないというのです。
それは毎年50兆円もの赤字が増える国債が原因です。
その短期的,長期的な部分に賛成派,反対派が出てくるのだと思います。
今回の江島首相が歳出を半減するという政策を打ち出します。
裏を返せば,国債に頼らずに財政を行いたい。
「国民に負担をかけたくない」という思いからなのでしょうか。社会保険費を減らされたら国民に負担が直接きますからね。
では,どうやって歳出を半減させるのか。
それは,地方に割り当てている「地方への支出を減らす」というものでした。
地方への支出を減らす。それは地方の自治体への負担を意味します。
これは各都道府県の財政状況を見るとわかります。
人口が多い大都市圏と,それ以外の都道府県では全く構成が異なります。
例えば東京だと,歳入である「地方交付税交付金」「国庫支出金」はほんの5, 6%であるのに対し,それ以外のところは約半分を国から得ています。
国からの支援がなくてもやっていけそうな大都市はよいが,そうでない県は大変です。
結果的には国民に負担をかけることになってしまっている。でも,この作品はその考え自体がよくないと言っているように思います。
つまり,地方は国からの支援に頼り過ぎているのではないか,ということです。
しかし,江島総理が考えているのは,将来の日本像でした。
ここから先は,実際に本を読んでみてください。
意外な結末も待っています。
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今回は,日本国債を「ロシアが買った」ということに総理大臣はじめ政府が戸惑っているという姿が描かれていました。
日本はこれに対して外交カードを出して買い戻そうとします。
もし国債をロシアが買占め,他に売られてしまったら大変なことになります。
他に売られたら「ハゲタカ」に乗っ取られてしまいますから。
ハゲタカとは,公債を買占め,経営権を乗っ取ったりして価値を高め,他に売るという組織です。先に麻生さんの話を出しましたが,その時には「海外の投資家が所有している日本国債の割合は約5%である」ということも言っていました。
このくらいであればまだ大丈夫だということなのでしょうか。
しかしその割合が増し,国債の償還ができなくなってしまえば,まさにデフォルト(債務不履行)が発生してしまうのでしょうか。江島は「未来の子供たちに負担をかけたくない」と,「オペレーションZ」政策を提案したのです。少子高齢化,都市への人口集中化。
これをストップさせるためにはどうすればよいのか。
今のままでは地方の過疎化はどんどん加速するでしょうし,そう考えればやはり地方の活性化が必要なのかなと思います。
新幹線が通ればそれは便利にはなると思います。
その反面,人口はどんどん都市へと移動するわけなんですね。
僕が住んでいる地域も人口は都市へ流れ,さらに交通の発達によって「ストロー現象」のように人口が都市圏へ吸われて行ってます。
やはりこの流れを何とかストップさせなければ,地方の過疎化はどんどん進むでしょう。
では,それをストップさせるためにはどうすればよいのでしょうか。
この作品では,地方の活性化,つまり「地方創生」と言っています。
地方の住民が自分たちの手で地域を盛り上げ,自主再建するということが江島の思い描いたことだったのです。
「未来の子供たちに負担をかけたくない」と。
この政策こそが「オペレーションZ」だったのです。
首都圏以外の地域は本当に苦しいと思います。
江島のような,本当に日本の将来のことを考えてくれる強烈な政策を持ち,リーダーシップを持った人がトップに立たないと,きっと日本は変わらないんだろうなと思わせられました。
● 日本の財政(歳出・歳入)のバランスを取っているのは日本国債である
● 少子高齢化・地方の過疎化により,将来は子供たち世代に負担がかかる
● 地方は「地方創生」を行い,自主再建していく必要がある
人間の多くは変化することを好まないし,僕もその一人だと思います。
一人一人の意識を改革しないと日本は良い方向へは行かないんだろうなと思いました。
その方向に向かうには時間がかかりそうですね。。。